やあ、目覚めは如何かな? プリンセス。
星々と神話の世界に心を奪われているうちに安らぎのなかに落ちてしまったかい?
夏の星座を巡る「スターライト・ツアーズ」が終わってしまったよ。
済まない、途中で起こしてあげれば良かったのだろうけど。
きみがとても心地良さそうに眠っていたものだから、それも躊躇われてね。
――寝顔を見たのか、って?
まさか、星空の瞬きと語られる物語を愉しみながらだってこんなにそばにいるんだ、
気配だけでもわかるつもりだよ。
でも、ほんの少しだけなら――ああ、何でもないよ。
このプラネタリウムでは定期的に展示内容も入れ替わるようだから、また足を運んでみるとしよう。
そうは言っても少々物足りないかな?
この翔栄町では夜空が綺麗に見える場所はあまり多くは無いようだけど――
これだけ空に近い学園の夜空でも、綺麗に星を眺めることは難しいね。
どこかに、穴場のスポットでもあるのだろうか?
星と言えば、思い出した話がある。
以前、きみではない女の子に『プリンセス』と呼ばないでくれ、と叱られたことさ。
つまりその子にはその子の名前がある、だからそう呼んでほしい、とね。
私にとってはその子も含めたすべての女の子を大事にしたい、そう思って呼んだんだけど――
でもそれは、星をただ単に星と呼ぶのと同じ行為だった。
夜空の星にも、ひとつひとつ名前が存在する。
こんな宇宙の片隅に住む私たちがそう名付けていることなど知らずに、今も輝き続けている。
――そして一方、名前を定められていない星もまた数えきれないほど存在する。
私たちがその存在を知れば、きっと素敵な名前で呼ぶことのできる星がね。
だから、もっときみのことを知ることができれば――
どんな名前で呼ばせてくれるだろう? その時を、楽しみにしているよ。
……それで、私が彼女のことを何と呼ぶようになったか、って?
決まっているだろう? 私と彼女、ふたりだけの秘密だよ。
それではおやすみなさい、プリンセス。
※※この物語はフィクションです※※
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