※WARNING!※
今回の記事は2019翔愛祭において公開された魔法少女と大ひよこっこ団制作作品『ヒロイン』の内容に関するネタバレを多数含んでおります。
作品そのものは下記URLにて公開しておりますので、そちらをご覧いただいてからの閲覧をお願い致します。
https://2-02942.city.charafre.net/?p=793
一昨年制作の『環たる星』三部作以上に難解というか、言葉にしづらい作品だと私自身思っていますし、一方でその時のような解説つき上映会イベントをやると不純物とかが混ざりそうな気がする(というかそんな暇もない)ので、今回記事という形で作者なりにこの作品に込めた意図や世界観、登場人物について色々と語ってみることにしました。良ければどうぞお付き合い下さいませ。
・2055年
そもそもこの作品の出発点はそれほど遠くない未来、けれど全く違う容体を成している世界や文明から始まり、それが如何にして成り立ったのか、あるいは変容する世界の可能性のひとつに過ぎないのかを追求する、という筋書きでした。
その原型は作中、此葉のノートにちょっとだけ書いてあるのですが……結果全然違う話になったけど。
作中ヒロインが舞台上で何やかんやと語っているのはそんな世界で、その世界において人間はすでに人間の形をしておらず、不定形な意識体として存在して(いると言えるのかわかりませんが)います。国や言葉、容姿による相違が無くそれでも固有の意識を有している彼らの共通幻想が『誰も見たことの無い舞台』の存在であり、そこにいる『ヒロイン』なのです。
・ヒロイン
当初ヒロイン役を演じてくれることとなった団のメンバーさんとの衣装合わせで、私から要望したのが『無国籍』というキーワードでした。
……で。
すぐにふたりして『無国籍』って何だろう? という疑問に達してしまいました(苦笑)。
無国籍料理店、などというととても雑多なメニューが並ぶと思うのですが、それはむしろ多国籍だし……
要は、『ヒロイン』は様々な人間(實花含む)の意思や願望で象られた存在であり、彼女自身は何者でもない、全てを混ぜ合わせたら無限大ではなく虚無になってしまった、という表現が一番適切かなということになり、無国籍どころかちょっと宇宙的なイメージを持たせることになりました。
あらゆる生物に姿形が無い世界において彼女だけがあの姿をしていられるのは、それを世界そのものが望んだことだから、なのでしょうね。
・第四の壁
これはまあ……演劇に関わった経験のある方なら耳にしたことあるかもですが。
第一、第二の壁は劇場の両脇の壁。第三の壁は舞台奥の壁。そして第四の壁は、観客と舞台上で行われている芝居をさながらスクリーンのように表示した現実とフィクションの境界をそう呼んでいます。で、通常映画は観客の意思などお構いなしに進行して終わるのですが、ときに映画世界はその第四の壁を越えて観客であるあなたに語り掛けてきます。最近では映画よりゲームのほうがそういう展開を導入することが多い(マザー2のラストとかね、導入しやすいメディアでもある)のですが、今作において實花とヒロインはそれを二か所はやっているので、彼女たちの語り掛けの視点が変わったところはそういうものだと思って下さい。
「あなたはこの作品『ヒロイン』をなんの為にご覧になりましたか?」
・復讐劇
当初この作品には、ヒロインを除けば此葉と大我しか登場しない予定でした。ですが、それではあまりに絵面的に寂しいこととドラマの主軸が成立しないことから登場させたのが朔と柚希です。なので彼女達ふたりの描写が明らかに不足しています。柚希に関してはあとで補完しましたが。
ひとりひとりにスポットを当てていくと……
此葉:年二回もバイトをクビになる重度のコミュ障なのですが、別に現実逃避をしたくて脚本を書いていたわけではありません。彼女にとっての現実は、常に彼女を置き去りにしているのではないか、そんな不安を整理し解決策を図る為の脚本で、結局『登る太陽に希望が見えるか、煤けた空に絶望が見えるかはわからないけど』という台詞にはそれでも朝を迎えるしかない、極めてドライで現実主義的な思いが込めているのです。
彼女の名称は『葉』=スペードに由来しています。
大我:クズです(笑)……で説明が終わってしまうのも何なのですが、こういうなんちゃってロマンチストに惹かれる女性は一定数いるのだと思っています。彼は単純に『ヒロイン』という作品全体を俯瞰すれば此葉の脚本を盗んで劇団『イフ』の最終公演に用いてしまったことに対する報い、願っても決して手に入らない理想=ヒロインを求め続けるだけの人生(とすら呼べないもの)を送ることになる――のですが、言葉通り此葉自身は彼を許してもいるんですね。故に彼もまた誰かの為に願いを続けることで、手に入れられこそしないけどヒロインの存在を認識することはできるのです(他の登場人物は出来ないこと)。
彼の名称は俳優、天野浩成さん=ダイヤに由来しています。
朔:何者にもなれない人。何かになりたいけど、その為の手段と勇気を持たない人。劇団『イフ』のある公演でのアクシデントから、舞台に立つことが出来なくなってしまった人。自分自身の人生すら脇役のまま終えるであろう人。そういう人だから世界を俯瞰的に捉えられる人。ヒロインの対極に存在し、また最も近い人。
彼女の名称は……まあここまで来たらわかる人にはわかると思うので割愛します(激汗)
柚希:https://2-02942.city.charafre.net/?p=800
『ヒロイン』作中時間軸以前に唯一ヒロインに遭遇している人。
彼女の名称については以下同文(酷いw)。
實花:(大我が執着した点も含めて)ある意味もう一人の此葉。それが全てです。
彼女の名称については實=実花=じっか=ジョーカーのもじりです。
復讐と贖罪、というキーワードは実はもっと露骨な形で当初のアイデアには存在していました。物語のスケールも100年単位の時間が流れる予定だったのですがキャラフレ内のアバターで再現が困難なことと、単純な話は前回やったから今回は反対方面に振り切った話を書きたいという理由でそのキーワードだけが形を変えて残ったのです。
・諸々
Q劇団『イフ』が解散した理由や此葉と大我が別れた理由は?
Aあまり特定したくないので書きませんでした。多分すごくつまらない理由なので。
Q大我は偽の招待状を用意してまで此葉たちを劇場に集めた理由は?
A實花=ヒロインの繰り広げる偽の『但し、彼女を除く』に関しては完全に彼の予想外の出来事でした。彼の演劇人としての現状は煮詰まっていました。以前の仲間に再会することで何かインスピレーションを得たかったのかもしれません。
Q結局ヒロインって何者なの?
A舞台を観る人の最も観たいもの、演劇あるいは舞台がもっとも魅せたいもの。
Q「エメスはいつか、土に還る」って何?
A物事にはいつか終わりが訪れる。けれどこの作品がそうであるとは限りません。
Qここに書かれてること、全部後付けじゃね?
A実は一部、そうです(笑) どこかは作品を観ながら探してね!