Call your name,from “doubt” #3

やあ、目覚めは如何かな? プリンセス。

今日は、この街でもとても珍しい場所にきみをお誘いしたくてね。

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ショッピングモールの中央に位置するレストラン。
場所そのものは、パーティ会場がイベントに活用されたりすることもあるしそれほど珍しくは無い。一度は足を運んだことがあるかもしれないね?

でも――ここのディナーコースを、きみは体験したことがあるかい?
……あるのなら、きみはとても幸せ者だ。
何しろここでの食事に必要となるディナー券は現在となっては入手する方法が殆ど無いとても貴重なもので、その甘美な味の記憶を再び廻ることは困難だからね。そして、今ひとたびその思い出を呼び起こすことができるのだから。
……ないのなら、きみはとても幸せ者だ。
何故なら、これからそのディナーが如何なるものか――人づてには知っているかもしれないが――今宵、初めて体験できるのだから。

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<レストランディナー券>というアイテムを所持した状態で着席すると、通常のテーブルと同じように向かい合い、会話を楽しむことが出来る。4人席と2人席があるので、利用の際は注意しないと折角のプラチナチケットを無駄に消費してしまいかねないからね。
勿論今日は、きみとふたりきりなのだから……2人席を用意してもらったよ。

<order>ボタンを押す度に前菜、スープ、メインディッシュ、デザートが供されることとなる。

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いずれも味わい深い料理だから、次が気になって<order>ボタンをどんどん押してシェフを急かすことも実はできるけれど、感心はしないな。折角の貴重なひとときなのだから、会話を楽しみつつじっくり料理を味わいたいね。
ちなみに私は如何なる場合でも料理や飲み物に関して仕入れたばかりの知識を自慢げに語ったり、自分で作れもしない味を論評したりすることはしないよ。説明はギャルソンの仕事だし、私は美味しい料理を幸せそうに食べるきみを見ているだけで満足だからね。

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それにしても、今日の料理はとても心と身体が暖まるメニューばかり、だね……はは。
季節も季節なのだし、これではまるで……うん?
どうやら、また私たちは……この街に残された想いの狭間に取り込まれてしまったようだね。

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「お嬢さん、どなたかをお探しですか? それとも貴女を探してくれる誰かをお待ちですか?」
「その人は優しい手をしていましたか? そうでなければ私と踊りませんか? さあ、手を取って」
「何もかも、辛いならば忘れてしまえばいい。 そのくらいの強さがなければ――――」

見てごらん。いや、きみには見えないかもしれないが――無数の光と影が、彼女の前で渦巻いてはかき消されて行くよ。
その意思は、いずれ彼女自身も飲み込んでしまいかねないほどにね……

えっ? 私が、とても怖い顔をしている……?

ごめん。私にも、いつか決着をつけなければならないことがあるんだ。
そのことを思うと、つい……

そうだ、気分直しに夜風にあたりに行かないかい? とても良い場所を見つけたんだ。

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……ほらね。ショッピングモールの裏手に、こんな綺麗な場所があるって私も最近知ったんだ。
この前は星が綺麗に見える場所が無くて残念な思いをしたかもしれないけど、どうやら時期によってはこうして美しい夜空を見ることが出来るらしい。
季節から考えれば差し詰め、彦星と織姫の置き土産といったところだろうか――うん?
まだ、さっきのことを気にしているのかい?

それでは、怖い思いをさせたお詫びにきみが眠りにつくまですぐ傍で見守っていることとしよう。
おやすみなさい、プリンセス。

 

 

 

 

 

一季。

きみの闇は今、どこにある?

 

※※この物語はフィクションです※※

 

~作者より~

※ここからはフィクションじゃありません。

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